必要保障額シミュレーター 計算ロジック仕様書
FP査読用 / 対象アプリ:hosho-sim(ver 0.12.0) / 制度定数は2025年度初期値(アプリ設定パネルで変更可能)
本書は実装済みの計算式・前提を、ファイナンシャルプランナーが妥当性を検証できるよう抜き出したものです。金額は全て「万円/年」を基本単位とし、年金等の制度値は2025年度の初期設定値です(利用者が設定で上書き可)。の枠は、特にご意見を伺いたい論点です。
0. このツールが出す答えと、その考え方
核心:「総収入−総支出」の単純比較ではなく、
毎年の世帯の資産残高(流動性ベース)を1年ずつ試算し、試算期間(既定95歳まで)の
残高の最小値がゼロ以上になるために追加で必要な額を「必要保障額」とする。
必要保障額 need = max(0, −(試算期間中の資産残高の最小値 minBal))
これにより「生涯では黒字だが途中の数年だけ資金ショートする」一時的不足(教育費ピーク期など)も検出できる。
さらに、貯蓄性保険の解約返戻金を充当した場合の概算も併記する。
解約返戻金で充当できる額 coverable = 残高が最小になる年の解約返戻金評価額 / 解約後の正味必要額 needNet = max(0, need − coverable)
4つのリスクシナリオを各々この方式で試算する:夫死亡妻死亡就業不能長生き
1. 全シナリオ共通の前提
1-1. 物価・年金スライド
| 項目 | 式・既定値 |
| 物価上昇係数(t年後) | (1 + 物価上昇率/100)^t 既定 物価上昇率=1.3%(直近10年平均)。生活費・教育費・イベント費に乗算 |
| 公的年金の名目係数(t年後) | 年金 = 基準額 ×(1+物価上昇率/100)^t ×(1−調整率/100)^min(t, 調整終了年−現在年)。物価に連動させつつマクロ経済スライドで実質目減りさせ、調整終了後は実質横ばい(2024年財政検証準拠) |
| スライド前提プリセット | 保守=調整率0.6%・終了2057(既定) / 標準=0.5%・2037(ベース②中位) / 楽観=調整なし(実質横ばい)。結果画面で常時表示・ワンタップ切替 |
| 家賃 | 既定は名目固定。設定で物価上昇を乗せる切替あり |
既定を保守(0.6%/2057)にしている。必要保障額ツールは下振れで家計破綻する非対称リスクのため安全側に倒す方針。標準(中位)を既定にすると「生活費は物価1.3%で増やすのに年金は中位で目減り」というちぐはぐが出るのを避ける狙い。プリセット値・終了年の妥当性をご確認いただきたい。
1-2. 資産残高シミュレーション(レッジャー)
- 毎年の収支(収入−支出)を資産に反映。黒字は主口座(現金)へ積み増し、赤字は現金→他資産(投資等)の順に按分取り崩し。
- 各資産は単利/複利・積立・配当(税引後入力前提)を反映して成長。
- 名義人が死亡・就業不能になった場合、その名義の積立を停止する設定(既定ON)。
1-3. 老齢年金の繰上げ・繰下げ係数
受給開始 <65歳:係数 = max(0, 1 − 0.004 × 12 ×(65−開始歳)) (繰上げ −0.4%/月)
受給開始 >65歳:係数 = 1 + 0.007 × 12 ×(開始歳−65) (繰下げ +0.7%/月)
ただし遺族厚生年金を受給中の繰下げは増額なし(係数1)で近似
1-4. 就労収入・公的年金(老齢)の基本式
就労収入(t) = 基本年収 + 昇給額 × t (workUntil 歳で0、区間指定の減額があればその額)
老齢年金 = (老齢基礎 + 老齢厚生 + 年金払い退職給付) × 繰上下げ係数 × 年金の名目係数(§1-1)
「年金払い退職給付」は公務員の年金第3階層。老齢厚生額に合算して扱う。
1-5. 児童手当(2024年10月改正後)
第1・2子:年12万(月1万)/ 3歳未満:年18万(月1.5万)/ 第3子以降:年36万(月3万)。18歳到達まで。所得制限なし。
多子加算の出生順カウントは22歳年度末までの子を対象(19〜22歳は手当0だが第何子の数えには残す。23歳以上は除外)。
2. シナリオA:夫死亡 / 妻死亡
死亡年齢を指定可能(既定=現年齢=即時)。指定した場合、死亡前は両者生存の家計(共通式)で進み、死亡年に整理資金・死亡保険金等を計上、以降は遺族世帯として試算する。
2-1. 遺族基礎年金
18歳未満の子が1人以上のとき:
遺族基礎 = 基礎額(83.2万) + min(子数,2)×23.9万 + max(0,子数−2)×8.0万
子の人数に応じた加算。子がいない期間は0。
2-2. 遺族厚生年金(厚生年金・共済加入者の死亡時)
遺族厚生 = 平均標準報酬額 × 0.005481 × 300(月みなし) × 3/4
平均標準報酬額 = 入力した「額面の年間総支給額(賞与込み・源泉徴収票の支払金額)」÷ 12(総報酬制に合わせ賞与を含む)
- 妻が受給:子の遺族基礎が切れた後、40歳以上で中高齢寡婦加算 62.4万/年を加算(一定要件)。65歳到達で打ち切り(経過的寡婦加算は別途・未反映)。
- 夫が受給:死亡時妻55歳以上の要件、原則60歳から(子があれば支給)。
- 30歳未満・子なしの妻は5年有期で打ち切り。
遺族厚生の報酬比例を「300月みなし+3/4」で算定。短期要件(加入300月未満を300月とみなす)を常に適用している点、長期要件との区別を省いている点は許容範囲か。
中高齢寡婦加算の支給要件(夫の死亡時妻40歳以上、または40歳時点で遺族基礎対象の子がいる)を、生存子の年齢から近似判定している。65歳以降の経過的寡婦加算は未反映。
2-3. 65歳以降の切替(老齢との調整)
受給者が65歳(自身の受給開始年齢)到達後は、
「遺族厚生 + 自身の老齢基礎」 と 「自身の老齢(基礎+厚生)×係数」 の高い方を採用
本来の「自身の老齢厚生を優先支給し、差額を遺族厚生で補う」仕組みを高い方の択一で近似している。総額はおおむね一致するが、税・併給の細部は簡略化。2028年4月施行の遺族厚生年金改正(子のない配偶者60歳未満の5年有期化等)は未反映。
2-4. 公務災害補償(遺族補償年金・消防職員等)
遺族補償年金 = 給付基礎日額 × 支給日数 × 調整率 ×(特殊公務災害割増)
支給日数 = 遺族数4人以上 245 / 3人 223 / 2人 201 / 1人かつ55歳以上 175 / 1人 153
調整率 = 遺族基礎+遺族厚生の両方 0.80 / 遺族厚生のみ 0.84 / 遺族基礎のみ 0.88 / なし 1.0 / 特殊公務災害は ×1.5
給付基礎日額は初期値 消防職員15,000円。公務災害該当時のみ加算。
公的遺族年金との重複給付を調整率(0.80/0.84/0.88)で簡易調整している。「厚生のみ/基礎のみ」を分離した値・特殊公務災害割増1.5倍の置き方をご確認いただきたい(数値は労災・地公災の政令で最終確認)。
福祉事業の年金的給付(遺族特別給付金など賞与対応分)は未モデル化。また給付基礎日額(初期値15,000円)が賞与込みかは要確認——賞与抜きだと特別給付金相当が抜ける(#1の報酬比例と同根)。
2-5. 死亡時の一時的な収支
死亡年の支出に 整理資金200万 を加算。死亡年の収入に 死亡退職金 + 死亡保険金 + 公務災害一時金(賞じゅつ金等)+ 遺族特別支給金(公務災害ON時・定額300万) を計上。
遺族特別支給金は福祉事業の定額一時金のため、併給調整率・特殊公務災害割増は掛けない(整理資金と同じ定額扱い)。
生活費(死亡後)= (食費+光熱費+その他)×12 ×(22歳未満の子あり 70% / なし 50%)× 物価係数
住居費は賃貸/持家ローン名義/団体信用生命保険の有無で分岐(団信ありで名義人死亡ならローン消滅)。
3. シナリオB:就業不能
発症年齢を指定可能(既定=現年齢=即時)。発症前は両者生存の家計、発症年に高度障害保険金・退職金を計上し、以降は就業不能世帯として試算。発症からの経過月で移行期給付を窓取りする。
3-1. 発症後の移行期保障(発症→休暇→休職→傷病手当金→障害認定)
発症からの月数で各期間を月割計上:
病気休暇(満額)… 0〜sickMo月 / 休職(休職給与率%)… sickMo〜leaveEndMo月 / 傷病手当金(率%)… leaveEndMo〜certMo月 / 障害認定以降は障害年金を月割計上
移行期収入 = (年収/12) ×(病気休暇月 + 休職月×休職率 + 傷病手当金月×手当率)
初期値:病気休暇3か月、休職終了12か月、障害認定18か月、休職給与率80%、傷病手当金率67%(いずれも設定可)。
傷病手当金(最長1年6か月)と障害認定待期を移行期の月割で表現。実際の支給開始日・待期3日・支給率2/3の扱いと整合するか。職域(消防=地方公務員共済)の病気休暇・休職の給与率の妥当性もご確認を。
3-2. 障害年金(障害認定後)
障害基礎(1・2級)= 基礎額83.2万 ×(1級 1.25 / 2級 1.0) + min(子数,2)×23.9万 + max(0,子数−2)×8.0万
障害厚生(報酬比例)= (額面年収÷12) × 0.005481 × 300(月みなし) ×(1級 1.25 / 2級 1.0) + 配偶者加給(配偶者65歳未満で23.9万)
3級(厚生のみ)= max(報酬比例, 62.4万) … 最低保障額を中高齢寡婦加算額で近似
障害厚生の300月みなし、3級最低保障を62.4万で近似している点。1級1.25倍・配偶者加給の加算条件(生計維持・65歳未満)の扱いをご確認いただきたい。
3-3. 公務災害(傷病・障害補償年金)
補償年金 = 給付基礎日額 × 支給日数 × 調整率 ×(特殊公務災害割増)
支給日数 = 1級 313 / 2級 277 / 3級 245 / 調整率 = 障害基礎+厚生 0.73 / 厚生のみ 0.83 / 基礎のみ 0.88 / なし 1.0
3-4. 障害後の残存就労収入
残存就労収入 = 年収 × 残存就労率% (障害認定後〜指定年齢まで)
等級別の率の目安:1級≒0% / 2級≒20% / 3級≒50%(設定で変更可)
3-5. 高度障害保険金・払込免除
- 契約ごとに「高度障害保険金の支払有無・対象等級しきい値(1=高度障害のみ/2=1・2級)・死亡同額か別額か」を指定。該当時に保険金(終身・定期は一時金、収入保障は年金月額)を計上。
- 払込免除も契約ごとに対象等級で判定し、以後の保険料をゼロに。
4. シナリオC:長生き
両者が試算終了年齢(既定95歳)まで生存する前提で、共通の「両者生存の1年分」式(就労→退職→老齢年金、生活費・住居・教育・保険料・イベント費)を毎年積み上げ、資産残高の最小値から必要額を算出。取り崩し順序・取り崩し率の設定を反映。
独身(結婚前)期間の生活費 = 基準生活費 × 結婚前生活費率%(既定60%)
5. 保険・収入・支出の補助ロジック
| 項目 | 扱い |
| 保険料 | 払込頻度(月/半年/年)で年額換算。払込期間満了・解約(active=false)・払込免除で停止。 |
| 死亡保険金 | 終身は常時、定期・収入保障は保障期間内で計上。収入保障は残存期間×月額。 |
| 解約返戻金の将来額 | 現時点額→MAX額をMAX到達年齢まで線形補間、到達後は横ばい。外貨建ては為替換算。 |
| 解約のタイミング | 即時/指定年齢到達/資産枯渇時(不足の最終手段または投資より先、の順位指定)。 |
| イベント費・負債 | 単発/周期(回数指定)で計上。奨学金等は名義人死亡で免除設定可。 |
| 外貨建て保険 | 設定の為替レートで万円換算。 |
6. 既知の簡略化・前提(FP査読の重点)
遺族基礎年金の終期「18歳到達年度末」を誕生日基準で近似(やや保守的に短め)。
65歳以降の年金は「自身の老齢」と「遺族厚生+老齢基礎」の高い方を採用する近似(本来は差額支給)。
2028年4月施行の遺族厚生年金改正(子のない配偶者60歳未満の5年有期化)は未反映。
傷病手当金(最長1年6か月)・障害認定の待期は移行期の月割で近似(待期3日・支給率2/3の精緻化は未実装)。
税(配当・譲渡益・相続)・売却コスト・為替変動リスクは未反映 → 運用利回りは税引後入力を前提。
公的年金は物価連動×マクロ経済スライド減算(既定=保守0.6%/2057)。結果画面で標準/楽観に切替可。プリセット値・終了年の妥当性を確認されたい。
公務災害の対公的年金調整率(遺族 0.80/0.84/0.88、傷病障害 0.73/0.83/0.88)と特殊公務災害割増1.5倍は簡易設定。職域の実支給・政令値と乖離がないかご確認を。
7. 制度定数 初期値一覧(2025年度・設定で変更可)
| 定数 | 初期値 | 用途 |
| 基礎年金 満額 | 83.2万/年 | 遺族基礎・障害基礎の基本額 |
| 子の加算(第1・2子) | 23.9万/年 | 遺族/障害基礎の加算・配偶者加給 |
| 子の加算(第3子以降) | 8.0万/年 | 遺族/障害基礎の加算 |
| 中高齢寡婦加算 | 62.4万/年 | 妻の遺族厚生加算・3級最低保障の近似 |
| 報酬比例係数 | 0.005481 | 遺族厚生(×300月×3/4)・障害厚生(×300月)。母数=額面年収÷12(賞与込み) |
| 繰上げ/繰下げ | −0.4%/+0.7% per 月 | 老齢年金の受給開始調整 |
| 物価上昇率 | 1.3%/年 | 生活費・教育費・イベント費 |
| 年金スライド(既定=保守) | 調整率0.6%・終了2057 | 標準0.5%/2037・楽観なし。結果画面で切替 |
| 遺族特別支給金 | 300万(公務災害ON時) | 福祉事業の定額一時金(併給調整・割増の対象外) |
| 整理資金 | 200万 | 死亡年の一時支出 |
| 生活費率(死亡後) | 子22歳未満あり70%/なし50% | 遺族世帯の生活費 |
| 結婚前生活費率 | 60% | 独身期の生活費 |
| 給付基礎日額(消防) | 15,000円 | 公務災害補償 |
| 試算終了年齢 | 95歳 | シミュレーション期間 |
必要保障額シミュレーター(hosho-sim)ver 0.12.0 / 計算ロジック仕様書(FP査読用)。本書は方法論の検証を目的とし、個別世帯の試算値は含みません。ご指摘は各「FP確認ポイント」単位でいただけると反映しやすいです。